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2018-01-03

おとうととUNO

隣、そのまた隣の部屋から「うわっ」「うそーん」「きたっ」と叫ぶ声が聞こえる。

お正月のおせちの刺激で痛むおなかをさすりながらトイレを目指して歩く途中その部屋をのぞき込むと、弟がひとりでウノをしていた。

「ひとりでウノしてるの…? やばいやつじゃん…」

私は、30分前にアイスやヨーゴを買ってきてもらった恩を忘れ、冷たい声をかけてトイレに入った。

弟は「へへへ」と照れていた。おい、褒めてないぞ。


***


声が大きく騒がしくリアクションが大きくよく動き回る弟は、私とは真逆の性格だ。家族や親戚、ご近所さんとも人懐っこく話をする。人と関わること、世話を焼くことが好きなようだった。

よくホットケーキを焼いてくれるし、「おかしかってきてー」と頼むと喜んでコンビニへ行く。私がお祭りでもらってきたヒヨコも一生懸命面倒をみていた。

だけど学校では違った。廊下ですれ違う弟はいつもひとりだった。

周りに溶け込むのに必死で変なことをしないように気をつけている私とは反対に、弟はひとりでじたばた波を立てまくっていた。

いくら女子から嫌われても、いくらクラスの男子から冷ややかな目を向けられても、文化祭のステージにひとりで立ち歌をうたい、うっとうしがられながらも部活を3年の春まで続け、弁論大会にも進んで名乗り出ていた。

言動からは一見明るいあっけらかんとした性格のようにも見えるけれど、裏では問題行動も目立った。たまに弟の担任から相談を受けることもあった。

要するにちょっといたいやつなんだ。
高校のとき同じクラスにいたらわたしも冷ややかな目を向けるに違いない。

でも家族だ(いちおう)。弟がクラスメイトから邪険にされているところを見たり想像すると胸がきゅっとする。私が弟に対していじわる(ちょっと)するのはよくても他人から軽く扱われるのは耐えられない。勝手だけど。

そういうとき、せつなみを感じながら、同時に家族を感じる。少々問題があっても歪んでても不器用でも勉強ができなくてもひとりでウノしてても自然と大切に思える。さらっと。

 

***

 

「うの!」

弟のひとりウノはまだ続いている。

明日、おなかの調子が良くなったら一緒にウノするから……だから今日ははやくねろ!

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